建 築 地 | :大阪府大阪市住之江区 |
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主 用 途 | :住宅 |
構 造 | :木造 |
規 模 | :地上2F |
竣 工 年 | :2005年3月 |
受 賞 | :E・家・くらし 住まいの設計コンテスト佳作 |
20代の若夫婦のための住宅。奥様が幼少時代を過ごし、親から譲り受けた昔ながらの長屋を建替えて、新しい家族の生活を始めようとしていました。ご夫婦の要望は、明るい家。明るいというのはしごくまっとうな要望なのですが、これを実現することが難しかったのです。かつての長屋は背後に背割水路があり、街区全体として風の流れや光などがコントロールされ、住環境が守られていました。しかし、長屋の一軒一軒がそれぞれ個人の所有になったことで、背割水路の部分にも建物を増築するようになりました。建て替えるにあたっては、家を少しでも広くと、3階建てに建て替えられて行きます。この敷地の周囲の建物もほとんどが3階建てで、3階だけはせめて明るくして、1・2階は真っ暗という家が多いのです。しかも敷地は南・北・東面を家に囲まれ、西面の前面道路も狭隘で、採光条件としてはこれ以上無いくらいに悪い。当初は3階建ても検討しましたが、予算に限りがあるためそれもできませんでした。
そこで、採光条件の悪さを逆手にとって、トップライトからの光を中心にした生活を提案することにしました。
トップライトは前面の道路から敷地の奥まで、建物の長手方向全てにわたって設けています。2階に床を張ってしまうとそれだけで、1階は真っ暗になってしまうので、2階の廊下部分をアクリル床として、1階まで光が届くようにしました。工事が終わり、アクリル床の養生を取ったとき、トップライトからの光は各部屋にふりわけられ、やわらかく家全体に充満しました。
今、ご夫婦は光の変化だけではなく、夕暮れの紫色の空や、台風時の雲の流れや、雨が流れる様を眺めて楽しんでいるとおっしゃっています。部屋には家具が置かれ、否応無く生活がやってきている。近い将来新しいメンバーが家族に加わり、この小さな家は、それこそ生活感で充満するでしょう。しかし、それでもこのトップライトからの光は、生活の変化に関わりなく、同じ光を家全体に注ぎ続けるのではないかと思います。長い時間のなかで、この光が家族の記憶となってくれれば。そんな記憶を家族が共有できること、これも心地よく暮すということの本質のひとつではないかと考えています。